「なぁ志穂、何の用だよ?」

ズボンのポケットに片手を突っ込んで、亨がシャツの首周りをバサバサとやる。

頬には既に汗が伝っていた。

本日の最高気温予想は35℃らしい。

「俺、帰ってエアコンの効いた部屋で高校野球見たいんだけど」

「そう!それよ!」

志穂は『正解!』とばかりに亨を指差した。

そして彼にグローブを渡す。

「……」

顔を見合わせる俺と亨。

つまりこういう事だ。

志穂は高校野球のテレビ中継を見て触発され、キャッチボールでもやりたくなって俺達二人を公園に呼び出したと。

「さぁ亨!構えて!」

志穂が手にした白球を大きく振りかぶる。

「本年度期待の剛腕ピッチャー、志穂投手のストレートを見せてあげるわ!」