そんな中。

「?」

明らかに違う音が、こちらに近づいてくるのが聞こえた。

ちゃっ、ちゃっ、という地面を叩くような軽い足音。

それに混じって、へっ、へっ、と荒い呼吸。

視界が霞むほどの大雨の中、走ってきたのは。

「あらら…」

首輪もしていない、小さな小さな子犬だった。

子犬は私が雨宿りしている木陰へと駆け込んでくる。

私の立っている足の間に入ったかと思うと、ぶるぶるぶるっ!と体を震わせて、雫を豪快に撒き散らした。

お陰で白いソックスに水飛沫。

「ちょっとぉ、迷惑考えなさいよねっ」

そんな事を言いつつも、愛くるしい子犬の姿に頬が緩んだ。