「わ、私コーチに抗議してくる!」

そんな事を言ってその場を離れようとする。

…本当は抗議の為だったのか。

違う。

自分の事だけで浮かれた私自身が、許せなかったのだ。

悲しんでいる聡子のそばに、こんな私がいる事がいたたまれなかったのだ。

その場から逃げ出したかったのだ。

それでも。

「いいよ」

聡子は私の腕を掴んで引き止めた。

次に彼女が顔を上げた時は、笑顔。

瞳はまだ濡れている。

でも必死に涙を堪えている顔だった。

「今回は仕方ない。きっと私よりもあんたの方が努力してたんだよ…でも、次は追いつくから。もっともっと頑張って、きっとあんたと一緒に出場できるように頑張るから」