二人並んで校庭を歩く。

「あの、さ、松下」

「ん?」

ご機嫌の体の彼女に、こんな事を訊くのは少し気が引けるが。

「何で俺に挨拶してくれたの?」

「え?」

キョトンとする松下。

だってそうだろう?

まだ松下とは、口をきいた事もなかったんだ。

同じ教室で、昨日のほんの数時間一緒にいただけ。

しかも斜め前の席だぜ?

俺ならとても声をかける勇気は出ない。

そんな事を考えていたら。

「あははは!」

俺の不安を笑い飛ばすように、松下は言った。

「これから一年一緒に過ごすクラスメイトに、挨拶をする理由なんているのかな?」