お伽話をキミに。





「…まぁ、別に俺が勝手に好きなだけだし。俺の話はいいだろ」




そう言った郁の顔はほんの少しだけど寂しそうに歪んでて。


そういえば時々こんな顔してたな、と普段の郁を思い出した。


恋した今だからわかるんだ。
郁の小さな表情の違い。




「…その恋、辛いの…?」


「…辛くはない。とりあえず今のところは」




郁人のそんな表情に思わず顔を顰めて問い掛ければ、郁は即座に首を横に振る。


変わらず寂しそうな顔だったけど、何故か口元は楽しそうに笑っていて。



その表情の意味まで俺にはわからなかった。