「だよ、な」



今日チャンスがあるとしたら今だけ。

如月さんが一人になる瞬間を狙うしかない。なんか言い方がこれから犯罪する人っぽいけど。


巡ってきたチャンス。

もう逃がすわけにはいかないから。




「あ、如月行った」




じーっと如月さんたちの様子を見ていた郁の声に反応して同じように視線を向ければ、既に如月さんはクラスの子に手を振ってこちらに背を向けていた(因みに図書室に行くには、こっちとは反対の階段を使わないと行けない)。




「…行く?」


「…行く」




郁の声を合図に俺たちは階段の影から反対の階段までの道を歩きだす。

それには勿論如月さんのクラスメートの前を通らなきゃいけないわけで。