お伽話をキミに。





何であんな早いの!?

いっつもめちゃめちゃゆっくり歩いてるくせに!!


時々前を歩く郁人から"悠斗がこんなへたれだったとは…"とか呟いてんのが聞こえてるけど…


うん。それはあえて無視の方向で。




「郁、待てって!!まじでどこ行くの!?」


「……ここ」




漸く追い付く…と思ったら急にピタリと足を止めた郁人。

そしておもむろに目の前を指差した。


指の先にあるプレートに書いてあるのは三年六組の文字。




───────如月さんのクラス…?




「え、ちょ…郁?」


「窓際、見ろ」




何が何だかわからないまま連れてこられた俺に、郁はとにかく見ろとだけ言って教室の一角を指差す。