お伽話をキミに。





こういうとき、自分が何で王子やってんだろうとか本気で思う。


王子としてのスキル全然生かせてないんだけど。


それどころか寧ろマイナスな気さえしてるんだけど。


自分でも情けなさすぎて落ち込みかけた俺。


ずーんと効果音付きで暗くなりそうになったとき、突然前に座っていた郁人がガタッと音をたてて立ち上がった。




「……今から行くぞ」


「へ?」




言葉の理解が追い付かない俺を余所に郁人はスタスタと教室を出ていく。




「ちょっ郁!?」




何!?何事!?


慌ててその後を追い掛けるけど、まさかの早いスピードで歩いている郁人に追いつけない。