黒髪の少女が暗い夜道を歩いていた。


ふらふらとおぼつかない足取りは誰がみても何かおかしいと感じるくらいで


月明かりのもと、彼女はひたすら何かから逃れているようにも見えた。


雨に濡れた髪の毛と洋服とが、彼女の惨めさをより一層引き立てていた。


彼女はある公園の前で立ち止まった。


暗い中、水道からぽたぽた落ちる水が


月の光にキラキラ輝いて見えたからだ。


彼女は静かに水道に歩み寄り、ほっそりとした足を上げてワンピースをめくりあげた。


生々しい傷痕が足の先から付け根の所までのびている。


透明な水が、彼女の血を長し、赤色に染まる。


やがて彼女は手慣れた様子で水道を止め、足の真新しい傷……まだ血が止まっていない箇所に


膝下のワンピースを千切って、巻き付けた。


それから腕の傷も同じように処置をし、そこでやっと何者かの視線を感じてはっとしたように顔を上げた。