涙の宝器~異空間前編

【午後六時三十分】

運転席に父さん、助手席に俺、後部席に母さんが乗った。

車は少し遠出をした。
俺がまだ地元に居た当時に、三人でよく買い物をしていたスーパーに向かっていた。

車窓から眺める町並みを見ているだけで気持ちが癒された。
次はいつ帰って来れるのだろうと今から思ってしまうんだ。

東京でのせっかちな時間を見事にスローモーションにしてくれた。
夕方だから仕方がないが、相変わらずの満員駐車場。

左脇の隅っこを何とか確保した。