涙の宝器~異空間前編

降車。

去っていくタクシーに会釈をした。
とうとう一番に当たり前の場所に来てしまった。
駐車場や民家が並ぶ近辺。
俺はゆっくりと坂を歩いて行った。

たかだか三年の間では、全く変わることのない日常生活の環境。
坂を下っては上がる繰り返しの日々を再び実感。

俺は見て動く事で、生活の記憶を次々に思い出していった。

長い坂を上がり終えると、さらに民家が建ち並ぶ。
左側にある細い道を歩く。
そして、俺はようやく足を止めた。

目の前には実家があった。