涙の宝器~異空間前編

と言うより、こっそり帰って来たのだから誰も待っているはずがなかった。

田舎の空港は人が少なくて落ち着く。
空港を出た後、タクシーに乗り込んだ。

走行中。
無言の空間の車内でぼんやりと海を眺めていた。
懐かしい情景。

何度これを目の当たりにしてきたことか。
以前まで当たり前だったこの景色、今では絶景に変わっていた。

体の内側から湧き出てくる安心感が、様々な辛さを和らげてくれていた。

俺は自分の心拍数の速さを抑えることができなかった。