涙の宝器~異空間前編

【自覚】

涼の人見知りは中学校三年生の頃に始まった。
原因は分かっていた。

どんなに明るく振る舞っていてはいるが、結局は家庭環境が不安定だといずれは必ずそれが影響してくるのだ。

涼はどこか周りと距離を置いていた。
それは定時制でも変わらなかった。
アルバイト先でもそうだ。

人が怖かった。
対人関係を恐れていたのだ。
従って、弱い自分を見せたくないために強がって見せていたのだ。

人とじゃれる事もしない。
周りから見れば本当に無愛想で可愛げがない奴だと思われていたでだろう……
だがそれが涼なのだ。

人はそう簡単に変われるものではない。