涙の宝器~異空間前編

とっさに女性の方へ目を向けた。

かなり小銭が散らばったが拾ってあげることをしなかった。
恥ずかしかったのか、拾い終えるとコンビニを出ていった。

それに合わせるように涼はATMの前に立った。
キャッシュカードを挿入して口座の残高を確かめる。

今日は月末の給料。
引き出した給料を財布に閉まってそれをズボンの後ろポケットに入れた。

ふと足元を見ると、左の靴紐が解けていることに気がついた。
紐をスッと結んでいる時だった。
涼は五百円が落ちているのを見つける。

そして、ふと思い出した。
おそらくさっきの女性のお金に違いない。

それを拾うと大抵の人は自分の財布に入れてしまうものだ。