涙の宝器~異空間前編



運転手はマイクを耳と口元にセットすると、何かを言いはじめた。


一方で俺の耳には入らない。


俺は目を閉じた。


そこには幻想が映った。


白い世界で煙りが足元に漂う。


しばらく歩いていると。


あの後ろ姿は………?


…………


浴衣を着た女が立っていた。


振り返って俺がいるのを確認すると、笑顔で小走りしてきた。



そして、俺の手を取り二人は歩き始める。




女は俺をエスコートするんだ。



「涼ちゃんあそこだよ」



俺は疑う事もしなく女に付いていった…