涙の宝器~異空間前編




「麻衣?
アンタさっきから何言ってるの?」


「何ってだからあの人が…………あれ?いない!」


「ははは!
病み上がりのせいだよきっと!」


「違うもん!
今そこに男の人いたじゃん!」


「はいはい」



優子は膨れる私の頭を撫でた。


私も納得しなかったけど仕方なく諦めた。


『幻』ということで済ませた。


でもさっきちゃんと会話したのに……


あれは病み上がりの影響?


自問自答も虚しく、すっかり優子のペースに飲み込まれ、私たちは渋谷の街へと消えていった。