『…で。…なで。かなで。』

ふと、誰かに呼ばれたような気がした。

『かなで。かなで…。』

私の名前を誰かが繰り返している。

そのとき、体の力が一気に抜けた。
動かすことも出来なくなり、どうにも出来なくなる。

…何が起きてるの!?

そのとき私が見たのは、あの泣いていた少女だった。

瞼が重くなっていく。
ダメ…。目を、開けなくちゃ…。
でも、思うようにいかない。

『かなで』

声がより一層大きく聞こえて、体が動くようになる。
私は、目を開ける。

何も見えない、闇。

「…ここ…は…?」

呟いてみる。
すると、闇の中から、あの少女が現れた。

「…あなたは…誰?」

私は恐る恐る尋ねる。

すると、少女はゆっくりと口を開いた。
口の形が変わっていく。
…何かを言った。

「…あ…お…」

私は、繰り返して言う。
少女は頷いた。

「あなたは、あお?」

少女―あおは頷く。

「声、でないの?」

少女がさっきから何も言わないのに気付き、私はまた尋ねる。
あおは、こくんと頷いた。

会話は、そこで途切れた。
と思った。

刹那、頭の中に声が響いてきた。