お母さんも私も、お買い物(というよりは商店街を歩くこと)が好き。
だから、よく一緒に行くんだ。
目的なんてないけれどね。

この町の商店街は、小さいながらも食べ物から洋服、薬局もあるし、最近はコンビニもでき、何でも買える。
小さな町でも、ここはいつも賑やかだ。

お母さんが私の車イスを押して、ゆっくりと進んでいく。
そんなときだった。
また、「あれ」が現れた。

女の子…。
今回は、そこまでわかった。
髪を横で結んでいて…。
そして。
泣いていた。
手を伸ばして、必死で誰かに何かを伝えようとしていた。

でも、お母さんの一言で消えてしまった。

「奏、ここで待ってて。」

「え?」

とっさ過ぎてよく分からなかったけど、お母さんは路地の奥へと走っていった。
私は路地を少しだけ覗く。
…お母さんの向こうに、誰かいるように見えた。
でも、それは一瞬で消える…。

「何…?どうしたの…?」

私にはどうにも出来ないから…。
とりあえず、待とう…。

そのとき。

ドサッ

背後で、何かが倒れる音がした。

「っ!?」

私はとっさに振り返る。

そこには、男の人が倒れていた。
私より、二つくらい年上…二十歳くらいの人。

「どうしたんですかっ!?」

私は声をかける。
…こういうときに限って、周りに人がいない。
しかも、話しかけても反応がない。

「…どうしよう…」

そのとき。倒れている人のお腹がなった。

…もしかして、何も食べていないのかな?

私は何かないかと辺りを見回す。
…あるわけ、ないか。
それに、気を失ってるし…
あっても食べられないだろう。

…待つしか、無いようだった。