耳元で囁かれる懐かしいその声。
美優の瞳に涙が溢れる。
それは頬を伝い、塞いでいる手に流れる。
「泣くなよ」
優しい声に美優は身をゆだねた。
「誰か居るの?」
ガチャリと開けられた司書室のドアから声が聞こえた。
美優を抱きしめる手が強まる。
しばらくして、ドアはそのまま閉じられ、足音は遠ざかっていった。
美優の口を塞いでいた手がゆっくりと外された。
抱きしめていた腕も解かれる。
美優は黒髪をゆらし振り返る。
そこに見えるのは、朝、桜の下にいた彼。
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