図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


12月25日から冬休みが始まる。

今日は24日、クリスマスイブ。

学校は3時限で終わり、生徒は蜘蛛の子を散らすように校舎から離れていく。

蓮はいつものように駅まで美優を送った。

違うのはその台詞。


「待ってるから」


蓮の言葉に美優が微笑む。




街中はクリスマス一色。

街角にはクリスマスツリー、オーナメントが色を添え煌びやかなネオン達。


蓮は私服に着替えまた、駅に現れた。

太陽はビルの谷間に消えて行き、薄暗い空には月は見えず、それが一層寒さを誘う。


「雪、降らねーかな?」


自分で言った台詞に自嘲する。


「蓮くん」


甘ったるい声が蓮を呼ぶ。

真っ白いコートにモコモコなブーツ。

黒髪に巻かれたマフラーはチェック柄。


蓮はいつものように手を差し出す。

美優はその手を取って驚いた顔を蓮に向けた。


「なに?」


蓮の問いに美優は視線をその手に落とした。


「冷たい」


美優はそれだけ言うとその手を自分の頬にあてた。

蓮の手に指にぬくもりが伝わる。


「美優はあったかいな」


蓮の言葉に美優がふんわりと笑顔を向けた。