濡れた体温ごと奪って



「おかえり」


「…ただいま」




ドアを開けると翔ちゃんがリビングから玄関へ来て迎えてくれる。


“おかえり”


なんだかくすぐったいな。


さっきまでの、どんよりした心が…少しだけ解放された様な気がした。


今日からここが、私の帰る場所なんだ。




「紗耶。急で悪いが俺、仕事入ったから行って来るな」


「緊急?」


「ちょっとした事件だから、すぐ帰って来る。心配するな」


「うん。わかった。いってらっしゃい」




翔ちゃんを見送った後、荷物を整頓して一息ついた。