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「……ふぅ…。上手く逃げられて良かった…」


あれからだいぶ走り、適当な空き教室の中へと入ってすぐさま鍵を閉める。


先生たちもちゃんと騙せているようで、あの後追ってくる気配は全然無かった。


必殺、壽吏の真似!(猫かぶり)

私も人気女優になれる日が近いんじゃないか!?



「--あ、遅かったね、真那加」



ん?



ドアと向き合う形となっていた私は、自分の名前が呼ばれた教室の奥の方を振り向く。


その声からして大体の予想はついてたのだが…。



「…先輩、なんでいるんですか」


案の定、机に座ってにこやかな表情を浮かべる先輩の姿があった。



「もうすぐ終わる頃かな~って思って、迎えに来ちゃった」


そう言って机から離れた先輩は、すたすたと私の近くに歩み寄る。


ところで、手ぶらな所を見ると、ほんとに一度家に帰ってまた来たのだろうか。

決して頼んでたわけじゃないけれど、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

頼んでないけど。



「さ、帰ろ」


先程私が閉めたばかりの鍵をカチャリと開け、スッと教室から出て行く先輩。


彼は一体何しに来たのだろうか?





……あぁ、何で私こんな面倒臭いことばかりしてるんだろ…。


さっきはその場の空気に惑わされてノリノリだったけど、



やっぱあの時引き受けるべきじゃなかったのかな……。……………


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