「ごめん壽吏、私ちょっと用事があるから先に帰るね」


「あ、うん」


そう言って、真那加は煌びやかな笑顔で手を振り教室から足早に去っていった。

教室に一人ポツンと残る私。





窓際の自分の席にゆっくり着く。


頬杖を付いて、窓の外を眺める。


殆どの生徒は帰宅したのか、正門までの道のりに人が1人いるかいないか。

校舎内からも、たまに誰かの足音が響いているだけで、常に沈静を保っている。



ほんのり香る春の甘い風が私の髪をなびかせ、頬に触れるのがちょっとばかしくすぐったい。





--だいぶ暖かくなってきたな…



こんな日は、君と初めて出会った日を思い出す。