早口なセリフが、凍えるような口調に乗せて唐突に僕の左耳に詰め込まれた。
今度は息が止まりそうになる。
「あ、うん、あー・・えぇと」
「上岡よ 上岡 愛」
名前がわからずに(まぁ全員わからないのだが)戸惑っているとさっと自己紹介してくれた。
急いで音楽の教科書を取りだす。白髪で一度見たら記憶喪失になっても忘れないかもしれないヘアスタイルしたおじさんが机からこんにちはした。
時計に目をやる。授業開始まであと5分。余裕がある。
「あの 音楽室って・・・・どこに・・」

・・すでに上岡愛さんは教室からいなくなっていた。 
上岡女子と互いのプロフィールでも明かしながら、楽しく教室を後にしようと思ったが、そんなふやけた思想は打ち砕かれ僕はひとり教室に取り残された。誰もいない教室にひとりなんてこの学校には自分以外の人間はいないのではないかと思わせた。
ってそんなわけないだろ