ラヴレター(仮)

『どーだったよ?』

「あたしまで緊張しちゃったよ」

『なんで、お前まで緊張すんだよ』

ばっかじゃねぇの、とあっけらかんに笑う一平の声が耳元の携帯電話から届く。
広い空間にいるのか、声が反響する。

その声は聞き慣れたものではあるけれど、いつも電話越しで、面と向かって会話するのは、いつからしていないだろう。

「だってデビューライヴだもの、ヘマしないかドキドキするでしょ」

『あぁ、イチキがなぁ』

「いや、どう考えても1番ヘマしそうなのは一平でしょう。井之村くんはトーク上手だし、ジンくんは、……あまり喋らないもの。イチキくんは1番若いけど常識人でしょう?」

あたしの言葉に、ムッときたのかなんでだよっ、と不機嫌で、拗ねたような声。

「だってそうでしょう、いつも唐突にノーテンキ発言するし」

『俺だってもー25だぜー?いい年した大人だろー?』

そんな、どう考えても同意しかねることを尋ねないでほしい。

いい年した大人はあんな写真を簡単なメッセージだけで寄越したりしない。