ラヴレター(仮)

「なぁ、前言撤回するって言ったら、どうするよ」

夕暮れ、夜の闇がすぐそばにある。
薄暗くなりつつあるこの時間に、井之村くんの表情は読み取れない。

ギターを背負い、制服のポケットに両手を突っ込みKishのカオとも言えるヴォーカルは皆より数歩後ろに立ち止まっている。

振り返った3人をゆっくりと見つめ直して井之村くんは大きく深呼吸をした。

「今日さ、すっごい楽しかったんだよね。この1ヶ月スタジオ篭って、ギター掻き鳴らしてさ」

相変わらず手をポケットに入れたまま、彼はとつとつと言葉を紡ぐ。

文化祭、Kishのファーストライヴは大成功に幕を閉じた。

流行りの数曲を選んで、4人で曲を奏で井之村くんの歌唱力を見せ付けた。

楽しかった、気持ち良かった。


まだバンドをくんで1ヶ月とは思えないくらい通じ合っていた。