~MNBにて~
火はもう消えていた。
その中から救助の人が担架を持って出てきた。

「・・っ・・・輝瑠くん・・・?」
その担架に乗っていた人は焦げていて誰だかわからない状態。
でも、あたしにはわかる。まだ、ひとつも思い出を作ってない。けど、わかるんだあれは輝瑠くん・・・。あたしの初恋の相手・・・。
「輝瑠くんっ!!」
あたしは担架に駆け寄って彼の名前を呼んだ。
何度も、何度も・・・
でも彼は目を開けない。
「あたしだよ。菜々美だよ。お願い目を開けて・・・」
そう叫んでも彼が目を開けることはなかった。

病院へ彼が運ばれて、顔に白い布がかけられた。
「まだ何にも思い出作ってないよ?ねぇ・・・聞いてよ・・・返事してよ!!」
あたしはその場に泣き崩れた。
そして、布をとって彼にキスをした。
それは短いけど、精一杯の愛を込めたキスだった。