そして、その日の夜。
私はお父さんが帰ってくるのをリビングで待っていた。
ガチャッ
とドアの開く音がした。
きっとお父さんが帰ってきたのだろう。
リビングに入ってきたのは、やはりお父さんだった。
「お父さん新しい鏡を買ったの??」
「鏡?」
「そう。書斎に置いてある綺麗な姿見。」
「いや、そんなもの買ってないぞ。」
「えっ?でも置いてあったよ?」
「お母さーん。俺の書斎に鏡を置いた?」
「置いてないわよ。あなた買ったの忘れてるんじゃないの?」
「自分が何買ったかぐらいさすがに覚えているよ。あとで書斎にいってみるか。」






トントン
と私の部屋のドアを叩く音がした。
「晴香、起きてるか?」
「うん」
「書斎に鏡はなかったぞ。」
「……うん」
「暑さで幻覚か何かが見えていたんじゃないか?」
「……うん」
「熱中症やら脱水症状には気を付けるんだぞ。じゃあ、おやすみ。」
「うん。おやすみ。」
私はお父さんが言ってることに納得がいかなかった。
私は、暑さで幻覚を見ていたのではなく、実際に鏡を見たのだ。
もう一度書斎に行こうと思ったが、もう夜遅いので明日行くことにした。