幸せの条件

 裏口の引き戸が開く音を聞いた母が奥から出てきた。

「・・・さくらちゃん!?どうしたの?」

母の顔とおっとりした声に私の緊張の糸が切れた。

「お母さん・・・。」

立ったまま子どものように泣きじゃくる私のただならぬ様子に母は、オロオロする。

「どうした?」

父がなかなか戻ってこない母を怪訝に思って姿を現した。

私を見て「上がれ。」と言った。

私は、涙を拭きながら父の後ろを歩いていく母の後をついていく。

居間には姉がいた。

「・・・直之さんと何かあったの?喧嘩?それくらいで帰ってきちゃ駄目じゃない。」

「ケンカじゃないわ。」

私は、着ていた上着を脱いだ。