幸せの条件

 私は、仕事が終わるとマンションに帰る。

いよいよ頑丈な鳥かごから脱出する日。

約束の時間より前に悠から携帯電話にメールがきていた。

化粧品と化粧道具だけを持って私は、マンションを出る。

悠が私に気付いて車を寄せてくれた。

「ありがとう、悠。」

私は、悠の車に乗り込む。

車が動き出す。

私は、手を組んで見つからないことをひたすら祈っていた。

もしかしたら震えていたかもしれない。

ビクビク、キョロキョロしながら駅のコインロッカーから荷物を出し、再び悠の車に乗る。

実家までの道がとてもとても長く感じた。

「着いたよ、さくら。」

ずっと身を屈めて隠れていた私の頭を悠が軽く叩く。

「今度、ランチ奢りなさいよ。」

「うん。」

「ほら、早く入った、入った。」

悠が笑いながら手を振った。