お茶を入れた私は、応接室へ向かう。

呼吸を整えてからドアをノックする。

「失礼します。」

私は、部屋に入った。

「・・・僕の妻のさくらです。」

直之に紹介され、急いでお盆を置き、お辞儀をする。

「いや~、綺麗な奥さん・・・。」

頭を上げた私の顔を見たお客さんが固まる。

「失礼ですが、旧姓は?」

「・・・片瀬です。片瀬さくらです。」

お客さんの目が宙を彷徨う。

「思い出したぞ!!」

お客さんがポンッと膝を叩いた。

そして、私の父の名前を言った。

「懐かしい!ぜひ会いたい。連絡してもらえないか?」

「は、はい。失礼します。」

私は、お客さんから名刺をもらい、頭を軽く下げて逃げるように応接室を出た。