幸せの条件

 私が帰宅した時、綺麗な月が出ていた。

「・・・ただいま。」

玄関から手提げの紙袋を持って私は、リビングにいく。

「お帰り、さくら。」

直之が読んでいる雑誌を閉じ、立ち上がった。

私は、手提げの紙袋をドアの近くに置く。

なにか飲もうと冷蔵庫に向かった。

「・・・さくら。」

振り返った私の前に直之がいた。

あっ!と思った次の瞬間、私の頬に鈍い痛みがはしった。

なにが起きたのか分からなかった。

「・・・なにするの?!」

私の口からやっと言葉が出た。

「僕の電話に出なかった。メールに返信がなかった。」

「友達と一緒だったのよ。返せるわけないじゃない。」

私の頬に再び直之の平手が命中した。