「お化粧品はどこのを使っていらっしゃるの?メイク時間はどれくらいかしら?」

しつこい小百合に怒鳴りそうになった私に薫が助け船を出してくれた。

「小百合さん、さくらさんが困ってるでしょう。」

薫は、小百合の先輩になり、この事務所では全体をまとめ、仕切っている。

「ごめんね、さくらさん。」

「いえ、薫先輩。」

私は、まだこの2人に慣れない。

今までに出会ったことのないタイプでどう接していいのか分からない。

しかし、無視するわけにはいかない。

ほとんど事務所で1日を過ごす者同士なので仲良くしないと事務所に居づらい。

私は、ため息をつく。

直之の事務所は大きいけれど弁護士もスタッフもギリギリの人数。

1人でもなにかあったら簡単にこの事務所は回らなくなる。

金持ちだと思っていたらそんなことはまったくなかった。