幸せの条件

 「動物園?」

入り口の門を見上げた私の眉間に皺が寄る。

「初めてのデートなのよ?」

「子どもなあんたにはぴったりだ。」

友馬が歯を見せて笑った。

「入ろうぜ。」

私の手を掴み、友馬は、力いっぱい歩いていく。

 園内を回りながら無邪気に楽しんでいる友馬を見るのが私にはちょっと楽しかった。

「料理、出来るの?」

木陰の空いたベンチで友馬が用意していた弁当を広げる。

「当たり前だ。自炊は基本。健康管理と節約の為には大事なこと。」

友馬は、私に箸を握らせた。

「食べろ。たくさんな。」

食べ始めた友馬を見て私も箸をつける。

「おいしい・・・。おいしいわ。」

笑顔になった私を見て友馬も微笑んだ。

「・・・なぁ、あんたのこと教えてくれないか?」

「え?」

「俺はお姉さんのことしか知らない。」

「・・・そうだったわね。」

私は、事務的に淡々と話した。

「・・・以上よ。」

話し終わった私は、ため息をつく。