幸せの条件

 私は、駅で夏子と別れた。

タクシー乗り場には長い列が出来ていた。

腕時計を見ながら私も列に並んだ。

「すみません。」

後ろから突然、声を掛けられた。

「この辺にケーキ屋はないですか?」

私は、振り返る。

サラリーマンだった。

「あの角を曲がったところに・・・。」

サラリーマンが驚いた顔をしている。

「さ、さくら?!」

私の顔を指差し、悲鳴のような声を出した。

「こうちゃん!?」

私も気付いた。

「戻ってきたんだよ。少し前に。・・・結婚して。」

「そう。元気そうで・・・幸せそうで・・・よかったわ。」

ちょうど番がきて私は、タクシーに乗り込んだ。

ドアが閉まる。