でも、誰もいない。


声のしたほうへ振り向いても、誰もいない。


近くに人のいる気配すらない。


「空耳、かな……」


春風に運ばれた、空耳。


聞き間違いだと思い、また桜の木を見つめる。


なぜだかわからないけど、この桜の木が気になってしょうがない。