「……え、ど、したの」


私の目に映ったのは。


丁寧な巻き髪が乱れたボサボサ頭の、

完璧な化粧が崩れた貧相な顔の、

かかとの高いヒールが折れた靴の、

香水でなく汗くさい、


私の知らない女が居た。


目が血走って、息を切らし、必死な形相の――


「南ちゃ…」




母は怒鳴った。私を叱った。
それは初めてだった。

死ぬほど心配したと、探したんだと。

未遂の秘密は、母が予定より早く帰宅するという思わぬ誤算でバレていたようで。

別人の母が私を叱った。甲高い少し語尾が上がる
声。

子守唄より胸に響きます。