ニチカは慶吾の手首を捻り上げ

「時間が無いんだろ…」

突き放した。

「なっ!あんた何様なんだよ!」

ニチカを睨み付ける慶吾に

「慶吾君!少し黙ってて!」

恵理奈が声を大にした。

「恵理奈…」

体を丸め黙り込む慶吾を
二人は鏡越しに確認して
目を合わせた。

「私普段メイクしないから楽しみなんです!」

「安心しろ…別人にしてやる」

「メイクすると別人っていうのも少し悲しい気がしますけど」

緩んだ顔のままの恵理奈を

「終わるまで黙ってろよ…」

一蹴する。

鏡越しにニチカを
唯見詰め続ける恵理奈は
時折目が合うと頬を染めた。