ヘッドフォンに耳を奪われ
画面を睨み付ける慶吾は
まだ気付いていなかった。

慶吾の背後から覗き込む
小さな存在に。

「皇紀君も秀磨君も…
長期休暇取る為なんだろうけど」

「やっぱり慶吾君も本当は‘S’好き何でしょ?」

突然
ヘッドフォンを外され
話し掛ける人物を驚き
振り返る慶吾に。

「びっくりし過ぎだよ」

笑い掛ける。

「恵理奈!」

「何してるの?」
「何してんだよ!」

重なった慶吾の声が
空の室内に響いた。

「何って…
慶吾君の様子が変だったから…」

「付けて来たのかよ?」

口籠り僅かに頷き俯いた。

「信じらんねぇ…。
普通付けて来るかよ…」

「だって…」

「だってじゃない!
ストーカーかよ?」