移動中の車内
携帯電話片手に
後部シートに身を沈め
画面を睨み付けている。

「聞いてますか?
本当なら貴方の付人は最低三人は必要なのを貴方の素性隠蔽の為に僕一人で担ってるんですから…。少しは協力してください!」

黙り込んだまま
運転手の男を一瞥するが

「とにかく、
スケジュールの調整は出来ません脅しではなく二年先までびっしり詰まってるんですから!」

直ぐに画面へと視線を戻す。

「これはありがたいことなんです解ってますか?」

信号が変わり
ブレーキが掛けられる。

「出来ないからと…
諦めることは出来ません!
出来ないならやるまでだ…。
暫く休みは要らない24時間体制で臨むのでスケジュールの組直しをお願いします」