だけど、頭から彼女の幸せそうな笑顔が消えてくれなくて。

ポロポロと涙が零れた。


『やだよ、翔太。他の人にこんなこと、しないで……』


心の中では素直になれるのに。

今のあたしは、それを言葉にする資格がない。


そんなもどかしい想いを両腕に込めて、しっかりと翔太の首に回した。


「……なんで泣くんだよ」

「これは……」

「そんなにイヤか?オレにこうされるの」

「……」


イヤなわけない。

まだ足りないよ、翔太が。


もっとキスして、抱きしめてって本当は言いたいよ。


「そりゃそうか。オレら、ただの幼なじみだしな」


翔太はゆっくりあたしの身体を解放して、玄関に向かって歩き始めた。


「ま、待って!!」


今しかないと思った。


今引きとめなきゃ、翔太がどこか手の届かない遠いところへ行ってしまう……。


そう考えただけで身体が震える。


「翔太……」


振り返った翔太の目の前で、ワンピースの胸リボンをシュルッと解いた。