「きゃッ!」


翔太はまたあたしを軽々と抱き上げ、

「お前はいつも大事なとこで記憶がないんだな」

やっぱり不機嫌そうにあたしを見下ろした。


……それより。

「大事なとこ……って?」


翔太は何かを探るようにジッとあたしを見つめた後、

「記憶がないのに何言ったってムダだろ」

と、吐き捨てるように言った。


その時の表情と声がカチンと頭にきて、

「そんな言い方する男、大ッ嫌い!」

黙っていればいいのに、やっぱりあたしは翔太の前で可愛くいられない女らしい。


「はいはい。嫌いでけっこうですよ」


「翔太なんて嫌いッ!!」


「分かったから暴れんな」


まるで子供扱い。

あの日、あんなに力強い腕であたしを抱きしめてくれたのに。


あんなに色っぽい表情であたしを見つめてくれたのに。