振り向いて確かめる勇気がなくて、バッグからそっと鏡を取り出して覗いた。


情けない……。

あたしって、もっと強くなかった?


鏡越しに見えたのは、やっぱり“宮本那波”本人


……と。


「え……」


今度は心臓が震える。


「マイ?どうしたの?鏡なんか見て」


「えッ、あ……なんでもない!!」


慌てて鏡をバッグの底に押し込んで、カクテルを喉に一気に流し込む。


「ちょっ、マイ!?」

「今名前呼ばないで!!」


ざわつく店内。

いくらミサトがあたしの名前を呼んでも、周りに聞こえるわけがないのに。


だけどぜったい、あたしが今ここにいることを気づかれたくない。


「翔太がいる……」

「え!?どこに」

「振り向かないで!」

「マイ?」


今、顔合わせたくない……。


宮本那波に……



腕組まれてる……翔太と……。