「俺、何かした?」
ううんとでも表現するかのように、キミは俯いたまま首を横に振る。
「もしかして、いきなり名前で呼んだのがいけなかった?」
そう聞くと、「違うよ。」と小さい声で言われた。
「優貴…」
俺は優貴の隣に座り込む。
「俺の名前、フルで分かる?」
「聖……み、やび。」
「優貴は釘宮優貴だよね?」
「うん。」徐々にキミの顔が上がっていく。
「坂木さんの知り合いなんでしょ?」
「うん。」
「俺と坂木さんが電話してたの、聞いてた?」
「………うん。」
「どうして家を飛び出したの?」
『これ以上、あなたの声を聞いていたら聖に逢いたくなるから。』
キミの言葉は車のうるさいクラクションで掻き消された。
勿論、そのせいで何を言ったのか聞けなかった。
「もう1回言ってくれる?車のせいで聞えなかったんだよ。」
「もう、言わない。」
その言葉と共にたくさんの涙を流すキミ。
俺は朝、屋上でした時のように、
キミを見ているのが辛くて、
身体が勝手に動いて、いつの間にかそっと抱きしめていた。



