アキ「でも麟太郎君…」
彼女の不安が俺には痛い程わかった
「……貴方達知ってるわ」
その女の人は俺に近付く
「芸能人の何とか…」
リン「弟です」
近付いた顔は化粧が濃くて
香水が強くて鼻孔のしびれを感じた
ご婦人というよりおばさん
着飾っても雰囲気までは覆えない
「…貴女は…」
女性は踵を返し林さんを指差した
「…ほら…あれ……ミス何とかよ!」
………
いやいや
そこまできたら最後まで言おうよ
ミス田中でしょ
アキ「…麟太郎君」
林さんの瞳がいよいよ不安で濡れる
―――
―――
―――
「こら!鈴木君やっと見つけた」
いきなりの若く弾んだ声に振り返る
リン「先生!」
俺が抜けた数学の先生
アキ「宮本先生」
林さんは先生の方へ歩み寄った
A組でも数学を教えているらしい


