赤地に緑のラインのチェック柄のオーバーオール。キャメルのがっしりしたブーツをはいている。
薄い茶色の少しカールした髪に、橙に近い明るい茶色の目がよく似合う。
そばかすが愛らしい顔の少年だ。
年齢は由衣と同じくらいか、そろより少し下だろうか。
軍手をした手を頭に回し、少し気まずそうな表情で奏を伺っている。
「谷田部、怪我はないか?」
やたべ、というらしい少年は、名前に合わない外国人らしい彫りの深い顔を赤く染めた。
「怪我はないっす。ただ、遠野(とおの)さんと東雲(しののめ)先輩には……」
「黙っておこう」
しかし、と続けて奏はやんわり、後片付けを完璧にするよう忠告。
ついでに立ち上がろうとした、谷田部が工具を踏みつけていたものだから、それが滑って尻餅をついたのは余談にしておこう。
「有り難いっす。……ところで、そちらの方は?」
「ああ。紹介しよう、私の客人の宮音 由衣さんだ」
「ああ、彼女が! 初めまして、この館で庭師兼雑務をやってます、谷田部 アランといいます」
ニコニコと上機嫌な笑顔で、谷田部が由衣に握手を求めた。
「初めまして、宮音 由衣です。谷田部さん、日本語お上手なんですね」
思ったままを口にすると、谷田部は一瞬、ぽかんと口を開けた。
「ああ! まあ、住んでるのがここだしね。あ、谷田部さんなんて堅苦しく呼ばなくていいよ。アランって呼んで!」
谷田部がニコニコと笑いかけてくるおかげか、初対面だというのに、それ程緊張しない。
アラン、と試しに呼んでみると、とても嬉しそうに頷いた。ついでに奏は、その様子を微笑ましそうに見守っている。

