Alice Doll

 夜壱谷さんって外見に似合わず、可愛らしい人なんだなぁ。

とちらかというと、力仕事が似合いそう。いや、料理も力仕事的な部分もあるだろうけど。
 けど、土仕事とかのが似合いそうだと思う。


「うっわ!」

 ガシャン! と大きな音とほぼ同時に突然、声が響いた。声色からして、夜壱谷さんじゃないと思う。

 少し高めな少年の声。

 奏さんも驚いたように目を見開いたが、すぐにふぅ、と息をもらして目を瞑った。

「由衣さん、ちょっと失礼……」

 奏さんが椅子から立ち上がる。一瞬、迷ったけど、音の原因が気になる。


「私も行っても?」


 問うと、少しの苦笑いが帰ってきた。曰く「見に行くのは構わないけど、多分、呆れてしまうと思う」とのこと。

 呆れる?

 一体何に対して呆れるのかは想像もつかなかったが、とりあえず、好奇心に後押しされて、奏さんの後に従う。


 お菓子と紅茶の空間を後にして、道沿いに歩いて行くと、バラバラと転がる工具が目に入った。
 大小形も様々なハサミに、トンカチ、巻き尺。ネジにスコップ、鍬(くわ)などがそこら中に散らばっている。

 そして、その中央には小さめの脚立が土をえぐって倒れていた。その隣に大の字になった少年が横たわっている。

「大変……!」

「ったー……。あ、奏様?」

 慌てて駆け寄ろうとするより先に、少年がむくりと上半身を起こした。