さらりと流すように言う奏だが、人形館の主人の本性がちらりと言葉の間に見え隠れしている。
さらに続ける奏の話によるとこうだ。
人形に魅了された人間は、奏の他にも何人もいる。その度合いが高いか低いかは本当に人それぞれだし、アンティークドールが好きな人、ファンシーなぬいぐるみが好きな人、それらも十人十色だ。
物心着いたときから人形に魅了され、いくつもの人形を自作・修繕してきた奏は、そんな彼らの好みに合わせ、人形を作ったり、壊れてしまった人形を元に戻しているのを生業にしているという。
とはいえ、奏の屋敷にはすでに、かなりの数の人形が居座っている。
そんな中で作業をしようものなら、大変面倒なことだ。なので、別途に部屋を借り、大抵はその部屋で仕事をこなしているのだという。
奏曰く「うちの人形が、他の人の人形に焼き餅焼いたり、彼らを気に入ったりしたら大変だからね」とのことだが。
信じがたい、というよりも唖然とする由衣を見て、奏は仕事に関してはそんなところかな、と締めくくる。
「で、でも、ここに来たのはまだ二回目ですけど。ですけど、今まで一体も人形なんて見たことが……」
「んー……。まあ、彼らは恥ずかしがり屋さんだからね」
人形っていうのは大抵、シャイな性格らしい。中には例外ももちろんいるらしいのだが、由衣にはよく分からない。
「あの、ちなみに何体くらい?」
「さあ、数えたことはないけど、結構いると思いますよ。一体一体は思い出せるけど、数を気にしたことはなかったから……」
「一体一体を正確に?」
当たり前だと笑う奏。基本、優しい印象の彼だが、今はちょっと会話が噛み合わないというか。由衣は少し怖じ気付く。

