「し、心配っていうか……。あそこまでの噂をよく放置できるなぁって思うと言いますか……。だ、大体どうして人っ子一人いないと思われるくらい人気がないんですか?」

「この家の正面玄関、壊れてるんだよね」

「へ?」

「一応、正面の門、電動なんだけどいつの間にか壊れちゃってて。今日、由衣さんが入ってきた裏門。あそこからなら特に問題なく入れるし放置してる。だから、あまり人目に付かないのかもね。

 あとは、たまたま皆、目に付かないだけだね。昼間、ほとんどは屋敷内にいるし、夜は帰る人が多いし」


 多分偶然に偶然が重なっちゃってるせいだと思うんだ。
 奏はそう言って人参を口に運んだ。


「じゃあ! この館にある大量の人形は何なんですか? あれが奇妙な噂を呼ぶ一番の原因になってると思うんですが!」

「あれね。私の趣味」

「趣味、ですか……?」

「ああ。昔から私は人形と名の付くものが大好きでね。毎月自分へのプレゼントとして買ってたら有り余っちゃって……。置いとく場所は一応まだあるんだけど、なかなかねぇ」

 父と母がうるさくて、と奏は肩をすくめて見せた。

 そんな奏の正面で、納得できない点はたくさんあるはずなのに、なぜこの人が言うと納得しようとしてしまうんだろう、と由衣は自問自答を繰り返すのだった。