しかし奏の口から飛び出た言葉は、由衣の思い至らぬ言葉であった。
「もし由衣さんが良ければだけど……」
少し思案を巡らすように空中を見た後、由衣に奏はこう告げた。
「明後日、日曜日。もう一度この屋敷に来てくれませんか?」
「へ?」
全く予想外だった奏の発言に、間抜けな声をあげると同時に由衣は戸惑いを見せた。
ここがあの人形館だと分かった以上、本音ならすぐにでも抜け出したかった。
噂には、『本物の人間』を捕らえて『人形』にしてしまう、なんてまことしやかな内容が含まれていたことも事実だからだ。
しかし、奏の精巧な美しさに魅了され、そこにいることを拒んでいない自分がいるのも確かだ。
「なんで、ですか?」
多分、鍵と猫のことだろうと粗方の予想はついていた。
しかし、由衣は聞かなくては気が済まなかったのだ。本人の口から、噂の否定も兼ねてきちんと説明して欲しかったのだ。

